山界の死王――楊端和(ようたんわ)の真実と魅力に迫る

山の民の女王・楊端和のイメージ画像 中国春秋戦国時代から学ぶ

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秦王・嬴政と同盟を結び、王都奪還という大義のために山の民を率いた“山界の死王”――楊端和(ようたんわ)。

『キングダム』における彼女の存在は、圧倒的な強さと美しさ、そして圧巻のカリスマ性で多くの読者・視聴者の心をつかんでいます。
武将が男性ばかりの戦国の世において、楊端和は”山の民”、”女王”、”女将軍”という、極めて特異な存在して描かれていますが、作品の中でも異彩を放っています。

映画『キングダム』シリーズでは、長澤まさみさんがその楊端和を演じていました。
第1作『キングダム』、第3作『キングダム 運命の炎』に引き続き、『キングダム 大将軍の帰還』でも登場し、その熱演とビジュアル面でも大きな話題となりました。まさに”当たり役”でしたね🔥✨️

本記事では、そんな楊端和の史実的背景やキングダムにおける描写、そしてキャラクターとしての魅力について深掘りしていきます。

※六大将軍という制度は、漫画「キングダム」での創作設定です

楊端和とはどんな人物か?

戦場での楊端和
出典:原泰久「キングダム」第32巻(集英社)

楊端和とは、史記・秦始皇本紀にも登場する実在の将軍です。
王翦
桓騎・羌瘣といった将軍とともに、重要な戦いの局面に関わったようです。
しかし、記載が多くはなく謎の部分も多いです。

一方、漫画『キングダム』では、”山界の死王”として異質の王として存在していますが、そのビジュアルと、圧倒的な戦闘力・統率力で秦の戦力として欠かせない存在となっています。
現在は秦国・新六大将軍として、中華統一へのキーバーソンの一人となっています。

史実での“楊端和”の活躍は?

『キングダム』では、山の民を率いる美しき女王として圧倒的な存在感を放つ「楊端和」。果たして史実での活躍はどのようなものがあったのでしょうか?

中国の正史『史記』—その中でも秦の歴史を記した「秦始皇本紀」には、確かに「楊端和」あるいは「端和」と呼ばれる人物の名前が登場します。

ここでは、史記に記された”楊端和”・“端和”の軍歴をひもときながら、楊端和の実在性とその役割について見ていきましょう。


史記に見える端和・楊端和の名と活躍

以下は、『史記』に記された楊端和(あるいは端和)の行動を時系列で整理したものです。
キングダムでも登場する、有名な将軍たちとともに戦った記録が示されています。

始皇(始皇帝即位から)軍事行動の概要共に行動した将軍記述の要点
9年(紀元前238年)魏の衍氏(えんし)を攻撃単独「楊端和」が自軍を率いて出陣
11年(紀元前236年)鄴(ぎょう)を攻撃王翦桓齮と共に九つの城を攻略したと記述
18年(紀元前229年)河内より出兵し、邯鄲を包囲王翦の指揮下
羌瘣と共に
「端和」が趙の都・邯鄲を包囲する軍を指揮したとある

これらの軍事行動はいずれも、秦が中華統一へと突き進んでいた時期に当たります。
とくに邯鄲の包囲は、趙という強国を追い詰める重大作戦でした。


「端和」とは楊端和なのか?

史記では、「楊端和」「端和」という二つの名前が登場しています。
文脈から見てこれらは同一人物であると考えられますが、史記では性別には一切触れられていません。

『キングダム』ではこの人物を「山の民の女王・楊端和」として描いており、女性であることが物語上の大きな特徴となっています。
しかし、史実上では性別も出自も不明であり、「山の民」という設定も確認できる記述はありません。

つまり、**“女性であり山の民の王”というキャラクター設定は創作”である一方、“端和”という将軍が実在し、軍事行動において非常に重要な役割を果たしていた可能性は高い”**と言えるでしょう。


実在性の根拠と考察

・「楊端和」という名前が『史記』に登場する
・王翦や桓齮といった名将と並び、九城を陥落させた実績が記されている
・趙の都・邯鄲を包囲するという大任を任されていた
・しかし、性別や出自などの情報はなく、創作とは明確に分ける必要がある

こうした記述から、「楊端和」は完全なフィクションではなく、実在の将軍をベースに創作された可能性が高い人物であると考えられます。

🔍もっと知りたい方へ:山の民の史実モデルは?

出典;原泰久「キングダム」第47巻(集英社)

『キングダム』に登場する「山の民」は、独立した文化や軍事力を持つ“異民族”のような存在として描かれていますが、史実において明確にその名で記録された集団は存在していません。

では、彼らは何をモデルにして創作されたのでしょうか?
そのヒントを与えてくれるのが、敬和学園大学の**土居智典先生(博士[文学])**による解説です。

📺 **土居智典先生のYouTubeチャンネル「ここが気になるキングダム」**では、史実における辺境勢力や「山の民」に該当する集団について、丁寧に解説されています。

とくにおすすめの回はこちら👇

コラム ——「キングダム」と「山の民」の“原点”も気になる方へ

実は『キングダム』には、連載前に描かれた幻のパイロット版があるのをご存知でしょうか?

その名も 『馬酒兵三百(ばしゅへいさんびゃく)』

この作品は、秦の穆公(ぼくこう)と“山の民”との出会いを描いた物語で、
のちに楊端和たちが登場する山の民の原型ともいえる存在が登場します。

土居智典先生の解説動画でもたびたび引用されており、
『キングダム』世界の成り立ちに触れたい方には、ぜひ読んでほしい一冊です📘✨

このパイロット版は、**『キングダム総集編1巻』**に収録されています👇

\キングダム総集編・『馬酒兵三百』も収録/

キングダムにおける楊端和の活躍と魅力

『キングダム』の世界で、楊端和は“山の民の王”として登場し、女性でありながら圧倒的な強さとカリスマ性を併せ持つ存在です。その登場は物語の初期からインパクト抜群で、秦王・政の王都奪還のための重要な同盟者として読者の心をつかみました。



王都奪還戦での鮮烈な登場

政が王位を奪われ、信たちとともに追放されていた中、助けを求めたのが“山の民”。
その山の民を束ねるのが楊端和でした。

彼女は、長く人の領域を離れて暮らしていた山の民の中でも圧倒的な実力で王に君臨し、「死王の地(しかおうのち)」を拠点とする独立勢力の統率者。政と誓いを交わした後は、王都奪還に向けて戦闘部隊を率いて参戦します。

山の民の異形の兵たちを巧みに使いこなし、まるで異世界から現れた軍勢のように王都に突入するその姿は、読者にも強烈な印象を与えました。

秦王嬴政のもと、新六大将軍へ

王都奪還戦、合従軍からの咸陽防衛戦、趙攻略戦など数々の戦いで、秦国を守るため・嬴政との誓いを守るために活躍してきた楊端和と山の民。

超攻略の最中、秦王嬴政は六大将軍の復活を宣言しました。
秦王嬴政による新六大将軍は、蒙武王翦楊端和桓騎の五名が決まり。
残り1席は空席となりました。
(キングダム75巻時点では、桓騎が戦死しているので、空席は2席になっています。)

楊端和は秦国に籍があるわけではありません。
にも関わらず、六大将軍に抜擢されたことから、楊端和に対する秦王嬴政の並々ならぬ信頼を伺えます。

美しさと強さ、そして孤高の魅力

楊端和のキャラクターが他の将軍たちと一線を画すのは、その“存在そのものの美学”にあります。

  • 美しい容貌と、冷静沈着で知略に富んだ判断力
  • 信頼する部下・バジオウとの深い絆
  • 外交にも長け、政との約束を守り続ける誠実さ

山の民という異文化を背景にしながらも、政との信頼関係は非常に強く、単なる同盟者という枠を超えて、秦王朝の未来を共に築く同志として描かれています。

映画『キングダム』シリーズでも、その存在感は圧倒的。第1作から登場し、特に王都奪還シーンでは女王としての威厳と戦士としての強さが見事に演じられ、多くのファンに支持されています。

楊端和の史実とフィクションの違い

『キングダム』に登場する楊端和は、“山の民の美しき女王”として高い人気を誇るキャラクターです。しかし、史実の「楊端和(または端和)」とはどこまで重なっているのでしょうか?

ここでは、史記などに記された事実と、フィクションの設定を整理して比較してみましょう。

項目史実の「楊端和/端和」『キングダム』での「楊端和」
名前の記載楊端和(ようたんわ)、または 端和(たんわ)楊端和(ようたんわ)
出自・所属不明(秦の将軍であること以外記録なし)山の民の王/女性であることが強調される
性別記載なし(男性とも女性とも取れる)女性として描かれている
軍事行動鄴(ぎょう)の攻略、邯鄲の包囲などに関与王都奪還戦や合従軍戦、政の即位後の戦いで山の民を率いて活躍
他の将軍との連携王翦・桓齮などと共に戦った記述がある政・信・河了貂らと連携し、合従軍戦では麃公軍とも共闘
拠点・領地不明(記載なし)山の民の聖地「死王の地(しかおうのち)」を拠点としている
人物像の描かれ方特に人物像の記述なし強さ・気高さ・包容力を併せ持つカリスマ的リーダーとして描写されている
秦の協力者であり、秦国六大将軍の一人でもある。

史実に基づく創作とフィクションの魅力

ご覧の通り、楊端和は史実に登場する「楊端和(または端和)」という将軍の名に基づいた創作キャラクターである可能性が高いと考えられます。
その上で、『キングダム』では史実では明かされていない出自や性別、さらには山の民というオリジナル設定が加えられ、強く美しいリーダー像が丁寧に作り上げられています。

このように、歴史的な名前をベースにしつつも、物語としての面白さやキャラクターの魅力を最大限に引き出すフィクションの手法が『キングダム』の大きな特徴とも言えるでしょう。


まとめ 〜楊端和という存在の魅力〜

楊端和(ようたんわ)は、史実ではわずかな記述にとどまる存在ながら、『キングダム』の中では“山の王”として圧倒的な存在感を放つキャラクターです。

  • 実在した可能性が高く、秦の大将軍として数々の戦に参加していたと記される
  • 漫画・映画『キングダム』では、女性でありながら王として山の民を統率し、政と共に歴史を動かすキーパーソンに
  • 戦場では冷静にして勇猛、政には忠義を尽くし、仲間に対しても深い情を持つ
  • まさに“美しき王”、“戦う女王”として、他に類を見ない魅力を持つ存在

特に、『キングダム』で描かれる彼女の姿からは、「生き方そのものが人を惹きつける」という力を感じます。
戦乱の時代において、楊端和はただの武将ではなく、“山の民”という別文化を背負いながら秦と共に歩む架け橋でもあるのです。

今後の『キングダム』の物語においても、彼女の活躍はますます注目されることでしょう。
筆者個人的には、【楊端和】と【山の民】のエンディングはどのように描かれるのか、激動の時代に異文化は、どのように受け入れられていくのか、ミックスされていくのか、それとも・・、
とても興味深いところです✨️

史実と創作の狭間に生きる楊端和の姿を、これからも楽しみに追いかけていきたいですね。


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参考文献・出典


補足

  • 本記事は、上記の史料・文献・動画などをもとに執筆しております。
  • 歴史的事実には諸説があり、創作や脚色を含む可能性もございます。
  • 記事中では、可能な限り注釈や文脈を明示しておりますが、ご不明な点やご指摘があれば[お問い合わせフォーム]よりお気軽にご連絡ください。

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