同じ仕事を教えても、教わる人によって成長が全然違うよね!
そうだね。当たり前だけど教わる人の経験や性格
によっても成長のスピードは全然違うよね。
だからトレーニングって難しいんだよね。
人によって教え方を変えちゃうと面倒くさいなーって
思っちゃうし、差別してると思われちゃうのも嫌だし・・
新人さんを一定のレベルまで育て上げるためには
その人によってアプローチを変える必要がありそうだね。
そんな時に役に立つ考え方があるよ!
それが、『スタンス』だよ。
スタンス?!
そう。スタンス=距離感のことだね。
この考え方を理解するとどんな新人さんが来ても
柔軟に対応できるようになるよ。
新人さんのトレーニングをしていくと、人によって成長が違う、、どうやって教えればいいのかわからない!こんな壁にあたる時があると思います。
同じことを同じように教えているつもりなのに・・・
1回、2回と新人さんが辞めてしまうと、あっという間にトレーナーが自信をなくしてしまいます。
そしてトレーニングが嫌いになってしまいます。何故かそのうち新人さんが入ることが嫌になってしまいます!
どうせまた辞めちゃうんでしょ。
仕事の邪魔になるから嫌だな。
なんで私ばかりトレーニングして忙しくなって・・。
などなど
こうなってしまうと、新人さんが育たない職場の文化ができてしまいます。
じゃあどうすればいいの?という疑問を解決してくれるのが『スタンス』です。
初めに言っておきます。
同じ職務であれば、
教える内容はみんな一緒です。
でも・・・
教えるスピードや練習量・練習時間・距離感は千差万別、十人十色。みんな違います。
この違いを乗り越えていくためのスキルがスタンスです。
新人さんの成長に合わせて、スタンスを取っていく。
そして最終的には新人さんを立派な一人前のスタッフに育て上げる。
これができるのがプロの仕事です。
トレーニングのコツはたくさんありますが、このスタンスを上手く取れるかが、非常に大切になってきます。恐らくトレーニングにおける一番重要なポイントになってきます。
それでは、スタンスのポイントをまとめていこうと思います。
大切な基準 人員配置におけるGood・Better・Best
まず、スタンスの話をする前に大切なことがあります。
それは、お店のサービス・商品の品質の基準を明確にしておくことです。
その上で、人員配置(シフト)の基準を作っておきます。
その基準を、Good・Better・Bestという3つで表します。
以下、3つの基準の大枠の説明をします。
Good:お店として、これ以上品質を下げてはいけない最低ラインの人員配置のこと
Better:通常の品質。いつでも柔軟に変更できる人員配置。(このラインを安定して維持するこ とが大切という品質)
Best:客数がとても多く最強の布陣で臨みたいなど、勝負所で使う人員配置
この基準の話をするときに出てくる疑問があります。
いつもベストの人員配置(シフト)で臨むべきではないか?というものです。
これに関しては、一つの考え方があります。
ある程度のバッファーを持って仕事に臨むことが大切、ということです。
バッファーとは、『ゆとり』や『余裕』のことです。
例えば、プロスポーツの世界などでも、ずっと最強布陣でトーナメントを戦い続けることはできません。何かトラブルがあった時に総崩れになってしまうからです。プロの世界でも、勝利を第一に戦いながらもある程度のゆとりを持ちつつ、新人の育成のためにシフトを組んだり、いざ勝負所のために戦力を温存しておくなどの戦略が必要になってきます。
いつも100点を目指して全力で戦い続けても、何かトラブルがあったら20点の結果しか出せなかった。これではプロとして失格になってしまいます。いつも70点をコンスタントに出し続けられるのがプロの仕事です。継続して勝率を上げていくのがプロです。
これを、お店のスタッフ配置に置き換えると、通常はBetterになります。可能な限り常にトレーニングを実施しつつも、何か急なトラブルがあった時には、すぐにフォロー体制に移行できるのが理想です。
それでは、3つの基準とは具体的にどのような場面なのかを説明していきます。
Bestとはどのような状態か。
例えば店長やリーダーが不在の時など、絶対にトラブルを発生させたくない場合などは、その日のメンバーで最強の布陣で臨みます。このような状態は極力ない方がいいですが、実際の店舗運営ではこのような場面も出てきます。
Betterとは、どのような状態か。
常に良い品質とサービスは保ちつつも、何かトラブルがあったら、すぐにフォローに入れる状態ができていることです。しかも、トレーニングもしやすい環境です。程よい負荷をかけながら仕事のスピードやリズム感などを学ぶのにも最適です。
Goodとはどのような状態か。
品質としてはかなりギリギリのラインになります。
いつでもフォロー体制に入れるようにしておくべき場面です。新人さんが多い時などは、このような場面が多い時もあります。また、新店舗のオープン時などは常にこの状態です。周りのトレーナーなどは常に臨戦体制です。いつでもフォローに入れる準備をしています。見極めが大切になる場面で、ある意味、トレーナーとしての資質が一番試される場面になります。
人員配置で、Goodを割ってしまったらクレームが発生する。
もしくは、長期的には売上が落ちてゆく。
そのような境界線となる基準がGoodになります。
この3つの基準を頭の中に入れておけば、フォローに入るタイミングや、トレーニングを一時中断して営業に専念するなど、切り替えの判断に迷うことはなくなります!
迷いがなくなればトレーニングはとても楽になります。
どんな時でも、お店のGoodを死守しましょう。その基準を新人さんに見せること自体が、とても良いトレーニングになります。まさに生きたお手本です。
トレーニングを一時中断したことが、最高のトレーニングになるという、面白い現象がおきます。
良いトレーナーになると、どんな状況でも、最高のトレーニングの場にしてしまうのです!
話が少し逸れてしまいましたが、
お店の基準Good・Better・Bestの基準は常に頭に置いておきましょう。
誘導と指示と示唆(しさ)
頭の中に常に、Good・better・Bestの基準を入れておいたら、
いよいよスタンスの話に入っていきます。
OJTでのスタンスを簡単に分類すると、誘導と指示と示唆の3つになります。
一つずつ解説していきます。
誘導 〜タイミングを学ぶ〜
トレーニングの現場で意外と多く見受けらるのが、シミュレーションを行った後に、いきなり現場に出て、『さあ!やってみて!大丈夫だから!』、、、、大丈夫ではありません。
理屈で言えば、これはサービスレベルでGoodを下回る可能性が高いからです。トレーニング中だからといってGoodを下回るようなギャンブルをしてはいけません!
誘導とは、トレーナーが動きをナビゲートしてあげることです。
例えば、お客様が来店されました。その時に半歩先を行き誘導してあげるのです。
誘導とお手本は似ているようですが、実際にやってもらうのは新人さんなので、お手本ではありません。誘導で新人さんが得られるメリットは2つあります。
1、判断はトレーナーしてくれるので、作業に集中できること。
2、トレーナーの判断やタイミングを体感できるため、自然とタイミングなどを学べる。
トレーナーがいつものタイミングで、反応し動き出すのを間近で体感することでタイミングを学ぶことができます。
そして誘導された先での作業に集中することができます。
誘導の目指すゴールは、現場の空気感への慣れと作業への集中です。
(プラスαで、タイミングを体感すること。)
指示
誘導でのトレーニングで、新人さんが落ち着いて、一つ一つの作業ができているようだったら、次の段階に入ります。
次の段階が指示です。
指示とは、誘導とは違い、動くのは新人さんだけです。
ただ、トレーナーは新人さんの近くにいて、作業が発生した時は優先順位の高い作業を指示します。この時点では優先順位を判断させての仕事はトレドオフですので、判断はトレーナーがします。新人さんには自分1人で動くことで自信をつけてもらいます。
何度も指示を受けているうちに、自分でもタイミングがわかるようになってきます。
指示の目指すゴールは1人で動くことへの慣れと、一つ一つの作業の正確さの向上です。
示唆
指示でのトレーニングが終わったら、次は示唆でのトレーニングに入ります。
ここで、初めてトレーナーと新人さんの物理的な距離を少しとります。
トレーナーは新人さんから少し離れた場所にいます。
示唆のトレーニングは、自分の判断でタイミングよく動けるようになるためのトレーニングです。
例えば飲食店で、今日のオーダーとりは新人さんに任せるよ、と仕事を割り当てておきます。
もしも、自分で良いタイミングで動けたらOKです。
でも、まだ判断に迷う時は当たり前のようにあります。
その時に、遠くから頷いてあげたり、目配せをしたり、お願いします、と声をかけたりして行動を促してあげたりします。
言葉だけで説明するのは難しいですが、トレーナーは指示はせず、新人さん自ら判断をさせる、ということです。ここでも、新人さんには小さな成功体験を重ねてもらいます。少しずつ自信をつけていきます。
示唆の目指すゴールは、判断と作業を同時にこなすことと、タイミングの答え合わせとです。
6割!出来たら次の課題へ
新人さんは、覚えることが山のようにあります。
トレーナーからすれば、教えることが山のようにあります。
そこで、みなさんこんな悩みを持ったことはありませんか?
一体どれくらいの完成度で、次のトレーニングに移れば良いのだろう?と。
結論から言うと、6割の完成度で、次のトレーニングへ移ります。
では、6割とは具体的にどのような状態か。
- 基本の作業・動作を間違えずに出来る。
- イレギュラーがあった時は、すぐに報告して指示をもらうことができる。
この2つができていれば、6割合格です。
イレギュラーは必ず発生します。でも全てのイレギュラーに対して事前にトレーニングすることは不可能ですし、効率が悪すぎます。
イレギュラーに対する、トレーニングは基本作業がしっかり身についてから取り組んでいきましょう。それまでは、ベテランさんやトレーナーが対応しましょう。その姿を見て学んでいきます。
たまに、ひとつの作業や工程を完璧に出来るまで永遠に同じことを繰り返したり、注意し続けるトレーナー?を見かけます。
これは良くありません。ベテランさんと同じレベルになるには、ベテランさんと同じ月日を経験しないと出来るようになりません。
これは、スタンスの取り方を間違えている典型例です。
語弊を恐れず言えば、このようなトレーナーは新人さんの成長を妨げています。
6割できるようになったら、スタンスを広げながら見守りつつ、適切なフォローをしつつ、ゆっくり育てていきましょう。
現場でのスタンスが広がるほどOff-JTを多くする
前項で、示唆と6割の話をしました。
あるトレーニングで6割の完成度まで行ったとします。
この場面で、急速に成長が止まってしまうことがあります。
それは、ある程度、作業ができるようになったら新人さんを放置してしまうパターンです。
これは大変もったいない。
ここでもポイントがあります。
新人さんは、1人である程度仕事ができるようになると嬉しい反面、次から次へと新しい疑問が湧いてきます。その疑問をすぐに解消しないで放置してしまうと、疑問はすぐに忘れてしまいます。忘れると成長の機会を逃すことになってしまいす。鉄は熱いうちに打たなければいけません。
現場で成長してスタンスを広く取り始めたら、逆にOff-JTでの距離は縮めます。
難しく考えなくて大丈夫です。
具体的には、毎日の勤務後に振り返りと質問の時間を必ず取ることです。5分で十分です。たとえ1分でも意味があります。
振り返りの内容としては主に以下のようなものです。
- 現場での疑問点や感じた事などを聞く。(基本は新人さんに話してもらうこと。)
- 8割褒めて、1割は次の課題を話す。1は何でもいい。談笑でも良い。
- goodを下回りそうだった場面があれば、アドバイスやフォロー・指導をする。
これだけ、やっていれば成長のスピードは落ちません。
むしろグンと伸びる人も出てきます!
トレーニングで一番大切なのはスタンス(距離感)
それでは、スタンスのまとめです。
トレーニングで大切なことは、不安を消し、集中できる環境を作り、自信をつけさせること。
そのために、スタンスの取り方がとても重要になってきます。
マニュアル通りに、作業を教えていくことは簡単かもしれませんが、作業を教えるだけでは一人前のスタッフにはなれません。優先順を覚え、イレギュラーの対応を覚え、自分で判断する頭を育て、新しい業務を覚え、、、たくさんの過程を踏んでいかないといけません。
その時に、トレーナーはベッタリくっつき過ぎず、放置せず、適正な距離感を取りながらトレーニングを進めていきます。スタンスを間違えると成長が鈍ってしまったりモチベーションを下げてしまったりします。
ぜひ、今回お伝えしたフレームワークを頭に入れながら新人さんの成長を加速させてください。
Good・Better・Bestを意識する。
トレーニング中も常に品質基準を意識しましょう。
それがスタンスをはかる基盤になります。
絶対にGoodを下回ってはいけません。
誘導・指示・示唆
新人さの進捗に合わせて誘導・指示・示唆を使い分けましょう。
新人さんの状態を常に観察しましょう。
そしてたくさんの小さな成功体験を積み上成長を加速させます。
6割出来たら次の課題へ進む
基本作業ができたら次の課題へ進みましょう。
完璧な人間はいません。6割以降はゆっくりと丁寧に育てていきましょう。
6割まで育った新人さんは、もうお店の宝です。
6割まで育てたトレーナーは偉い!!お互いを大切にしてください。
ベッタリくっつき過ぎて、成長の機会を奪わないようにしましょう。
完璧を求めて過ぎてモチベーションを下げないようにしましょう。
放置をしないようにしましょう。
スタンスを広げるほどOff-JTを多くする
現場でのスタンスを広げるほど、Off-JTの距離は近くしていきましょう。
トレーニングとは、訓練と教育です。
現場で距離を開ければ空けるほど、新人さんはたくさんの疑問や思いが湧いてきます。その疑問を早く解決したり議論したりすることで、成長の速度はどんどん早くなっていきます。
それが出来ていると、気がついたら、逆に新人さんから学ぶことがたくさん出てくるはずです。
トレーニングが一通り終わったら、新人さんは良きパートナーになっているでしょう。
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